【高市首相のG7外交】その裏で何が起きていたのか? 世界が静かに進める「中国依存見直し」の正体

ニュースを見ていると、今回の高市首相の欧州歴訪とG7出席は「中東情勢」や「エネルギー問題」が中心だったように見えます。

確かにそれは間違いではありません。

イスラエルとイランを巡る緊張や原油価格の上昇は、日本経済にも大きな影響を与える重要なテーマです。

しかし今回の外交を少し離れた場所から眺めてみると、別のキーワードが見えてきます。

それが「中国との距離感」です。

もちろんG7は反中国会議ではありません。

ですが英国、イタリア、フランス、そしてG7各国の動きを見ていると、共通していることがあります。

それは「中国とどう付き合うか」ではなく、「中国にどこまで依存するか」という問題です。

この違いは意外と重要です。

今回の記事では、高市首相の外交を入り口にしながら、世界が静かに進めている「中国依存見直し」の流れを分かりやすく解説していきます。


高市首相の欧州歴訪で本当に注目すべきポイント

高市首相は今回、英国、イタリア、フランスを訪問した後にG7へ出席しました。

表向きには各国との友好関係強化や安全保障協力が目的です。

これは外交としてごく自然な動きです。

しかし興味深いのは訪問先です。

なぜドイツではなかったのでしょうか。

なぜスペインではなかったのでしょうか。

もちろん外交日程には様々な事情があります。

それでも今回の訪問先を見ると、一つの共通点が浮かび上がります。

それは各国とも近年、中国との関係を見直しているということです。

英国は先端技術の流出防止を重視しています。

イタリアは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」から距離を置きました。

フランスも中国市場を重視しながら、依存を減らす方向へ動いています。

つまり高市首相が会談した国々は、立場こそ違うものの、全て「中国との新しい距離感」を模索している国だったのです。

ここが今回の外交を見る上で非常に面白いポイントです。


なぜ世界は中国との距離感を見直し始めたのか

少し前まで世界は真逆の方向を向いていました。

中国は「世界の工場」と呼ばれ、多くの企業が中国へ進出しました。

人件費は安く、市場は大きい。

企業にとって非常に魅力的だったのです。

日本企業も例外ではありません。

自動車、家電、機械、化学製品。

多くの産業が中国市場と深く結び付いてきました。

ところが状況は変わります。

まず大きかったのが新型コロナです。

世界中の物流が混乱し、多くの企業が部品不足に苦しみました。

さらにロシア・ウクライナ戦争が発生します。

各国はそこで気付きました。

「必要なものを特定の国だけに頼るのは危険ではないか」

ということです。

これは企業だけの話ではありません。

国家レベルの問題でもあります。

もし重要な資源や部品の供給が止まれば、経済活動そのものが止まってしまうからです。

正直なところ、平和な時代にはあまり考えなかった問題です。

しかし世界情勢が不安定になるにつれて、一気に現実味を帯びてきました。


イタリアが一帯一路から距離を置いた意味

今回のテーマを考える上で特に興味深いのがイタリアです。

イタリアは2019年、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に参加しました。

当時は大きな話題になりました。

G7加盟国として初めて参加したからです。

中国からの投資や経済効果への期待もありました。

しかし数年が経過すると空気が変わります。

期待されたほどの経済効果が得られなかったのです。

もちろん一定の成果はありました。

ただし「参加したから劇的に景気が良くなった」という状況にはなりませんでした。

その結果、イタリアは徐々に距離を置く方向へ進みます。

ここで重要なのは、中国が嫌いになったという話ではないことです。

そうではなく、「依存しすぎるのはリスクではないか」という考え方が強まったのです。

これは現在の欧州各国にも共通しています。

中国との関係は維持する。

しかし依存は減らす。

言葉にすると簡単ですが、実際には非常に難しいバランスです。

なぜなら中国市場は依然として巨大だからです。

だからこそ各国は悩み続けています。

そしてその悩みは、日本も決して他人事ではないのです。


英国が警戒するAI・半導体問題

今回の訪問先の中でも、英国は少し特殊な立場にあります。

英国が強く意識しているのは、AIや半導体などの先端技術です。

近年、各国は「技術そのものが安全保障になる」という考え方を強めています。

昔であれば安全保障と言えば軍事力でした。

しかし現在は違います。

AIを制する国が経済を制し、半導体を握る国が産業を支配すると言われる時代です。

少し大げさに聞こえるかもしれません。

ですがスマートフォン、自動車、家電、金融システムまで、現代社会は半導体なしでは動きません。

英国が技術流出を警戒する理由もそこにあります。

つまり英国にとって中国問題とは、単なる外交問題ではなく技術覇権の問題なのです。

高市首相がこうした国と会談した意味は決して小さくありません。

日本もまた半導体復活を国家戦略として進めているからです。


G7の表テーマは中東、裏テーマは供給網だった

今回のG7では中東情勢が大きな議題になりました。

イスラエルとイランを巡る緊張が続き、世界中が神経を尖らせています。

日本にとっても無関係ではありません。

なぜなら日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しているからです。

特に原油輸入の大部分は中東地域に頼っています。

もしホルムズ海峡で問題が発生すれば、日本経済への影響は避けられません。

ガソリン価格。

電気料金。

物流コスト。

私たちの日常生活にも直結します。

しかし各国が議論していたのは原油だけではありません。

重要鉱物や半導体なども同じです。

レアアースが止まればEVやスマートフォンが作れなくなる。

半導体が不足すれば自動車生産が止まる。

つまり原油もレアアースも本質は同じなのです。

「もし供給が止まったらどうするのか」

この問いに対する答えを探しているのが、現在のG7だと言えるでしょう。


「デリスキング」とは何か

ここで近年よく使われる言葉が登場します。

それがデリスキングです。

デカップリングとの違い

以前はデカップリングという言葉が注目されました。

これは経済関係を切り離すという意味です。

しかし現実的には難しい考え方でした。

中国経済はあまりにも巨大だからです。

デリスキングという発想

そこで登場したのがデリスキングです。

意味はシンプルです。

「リスクを減らす」。

それだけです。

中国と取引は続ける。

しかし依存しすぎない。

供給先を分散する。

代替手段を持つ。

そうした考え方です。

なぜ各国が支持するのか

この考え方なら経済成長と安全保障の両立が期待できます。

もちろん完璧ではありません。

ですが現実的な落としどころとして、多くの国が採用し始めています。

現在のG7の空気を理解する上で、この言葉は非常に重要です。


日本にとってのメリット

日本にとってもメリットはあります。

まず供給網の安定化です。

コロナ禍では部品不足によって自動車メーカーが減産を余儀なくされました。

こうしたリスクを減らせる可能性があります。

さらに半導体や先端技術分野への投資も進んでいます。

国内工場の建設や関連産業への投資は、地域経済や雇用にもプラスになります。

経済安全保障は難しい言葉ですが、簡単に言えば「経済を守るための保険」のようなものです。

保険料はかかります。

しかし何か起きた時の備えになります。

そう考えると分かりやすいかもしれません。


もちろんリスクも存在する

一方で課題もあります。

日本にとって中国は最大級の貿易相手国です。

輸出先としても重要ですし、部品や原材料の調達先としても欠かせません。

そのため距離を取りすぎれば、日本企業への影響も大きくなります。

また供給網の再構築にはコストがかかります。

工場を移転する。

調達先を増やす。

在庫を確保する。

どれもお金が必要です。

結果として商品価格の上昇につながる可能性もあります。

安全保障と経済効率。

この二つをどう両立するかが今後の大きな課題です。


高市外交が示した未来

今回の高市首相の欧州歴訪を見ていて感じるのは、世界が大きな転換期に入っていることです。

かつては「安く作れる場所で作る」が正解でした。

しかし今は違います。

多少コストが高くても安定供給を優先する。

そうした価値観が広がり始めています。

英国も。

イタリアも。

フランスも。

そして日本も。

それぞれ方法は違いますが、同じ課題と向き合っています。

今回のG7は反中国会議だったのでしょうか。

私は少し違うように感じます。

むしろ各国が模索しているのは、「中国がいても、いなくても経済が回る仕組み」です。

それは中国との対立ではなく、依存からの卒業と言った方が近いかもしれません。


まとめ|本当のテーマは中国ではなく「依存」だった

今回の高市首相の欧州歴訪とG7出席は、中東情勢やエネルギー問題だけでは語れません。

その裏では、世界各国が中国との新しい距離感を模索していました。

重要なのは反中国か親中国かという単純な話ではありません。

依存しすぎるリスクをどう減らすのか。

そこに今回のG7の本質があります。

高市外交が成功だったのかどうかは、まだ誰にも分かりません。

ただ一つ確かなのは、世界のルールが少しずつ変わり始めていることです。

そして数年後に振り返った時、今回のG7がその転換点の一つとして語られる可能性は十分にあるのかもしれません。