【南海トラフ地震】「いつ来る?」より「来た後」が本当の問題だった

南海トラフ地震という言葉を聞かない日は、もはや珍しくありませんが、「結局これは何で、どれくらい現実的な話なのか」をきちんと説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

発生確率70〜80%という数字が一人歩きし、不安だけが先行する一方で、被害想定がなぜ何度も更新されているのか、地震そのものより津波や地震後の生活がどれほど深刻な問題になるのかについては、あまり語られていません。

また、南海トラフ地震がなぜ他の地震より特別扱いされ続けるのか、その背景には人口や経済への影響という現実的な理由があります。

本記事では、南海トラフ地震の基礎知識から発生確率の正しい受け止め方、被害想定の裏側、そして備蓄リストよりも重要な「考え方」までをデータを交えて整理し、「いつ来るか」ではなく「来た後にどう動くか」という視点から、この巨大地震と向き合っていきます。


南海トラフ地震とは何か?20秒でわかる基礎知識

南海トラフ地震とは、駿河湾から日向灘沖までおよそ700kmにわたって続く、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に位置する海底の溝、いわゆる「トラフ」で発生すると想定されている巨大地震の総称です。
「トラフ(trough)」という言葉は英語で「溝」や「くぼみ」を意味し、名称の響きに比べると語源自体は意外なほど地味ですが、この溝に沿ってエネルギーが蓄積されている点が問題視されています。

過去には1944年の昭和東南海地震、1946年の昭和南海地震のように、比較的短い間隔で連続して発生した例もあり、現在では個別の地震ではなく、連動して起こる可能性を含めて「南海トラフ地震」と一括りにして警戒されています。


発生確率70〜80%の数字、正直どう受け取ればいいのか

南海トラフ地震について語られる際、必ずと言っていいほど登場するのが「30年以内に70〜80%」という発生確率ですが、この数字は強い印象を与える一方で、誤解されやすい表現でもあります。
この確率は「30年後までに必ず起きる」という意味ではなく、毎年およそ2〜3%程度の発生確率が積み重なった結果を示しているに過ぎません。

そのため、明日起きてもおかしくない一方で、何十年も起きない可能性も普通に残されており、この曖昧さが「怖いけれど、何をすればいいかわからない」という状態を生み出しています。数字だけを見て不安になるよりも、その前提を理解することが重要です。


被害想定が毎回更新される理由、実は“想定外”対策だった

南海トラフ地震の被害想定では、死者数が最大で約32万人、全壊や焼失する建物が200万棟を超えるとされており、初めてこの数字を見た人は「さすがに大げさではないか」と感じるかもしれません。
しかし、これらの被害想定は、冬の深夜に発生し、強風が吹き、避難が遅れた場合など、考え得る限り最悪の条件を重ねた上で算出された最大値です。

これは恐怖を煽るためというよりも、行政や自治体が「想定外だった」と言い逃れできないようにするための数字であり、対策の出発点として設定されているものだと考えた方が現実的でしょう。


地震より怖いのは津波と“その後の生活”

南海トラフ地震で本当に深刻なのは、建物が揺れている時間よりも、地震の直後に到達する津波と、その後に長期間続く生活インフラの混乱です。
地域によっては津波が数分から十数分で到達するとされており、さらに停電や断水が数週間続き、都市ガスの復旧には1か月以上かかる可能性もあります。

実際の被災地の声を見ると、食料以上に困ったという意見が多いのがトイレの問題で、水が出ず下水も使えない状況が、日常生活に大きなストレスを与えることがわかります。地震対策というと揺れへの備えに目が向きがちですが、生活をどう維持するかという視点が欠かせません。


なぜ南海トラフだけ、ここまで騒がれ続けるのか

日本は地震が多い国ですが、その中でも南海トラフ地震が特別視され続ける理由は、単に規模が大きいからではありません。
太平洋側には大都市圏や工業地帯、港湾や物流拠点が集中しており、ここが同時に被災すると、被災地以外の地域も含めて日本全体の経済活動が長期間にわたって停滞する恐れがあります。

つまり南海トラフ地震は、特定の地域だけの問題ではなく、全国の生活や仕事に影響を及ぼす可能性が高い災害として扱われているのです。


備蓄リストより大事な「考え方」の話

防災というと、水や食料、非常用持ち出し袋の準備が注目されがちですが、それ以上に重要なのは「自分はそのとき、どう動くのか」を具体的に想像しておくことです。
昼間なのか夜なのか、家にいるのか外出しているのか、家族が別々の場所にいる場合はどうするのかといった点を事前に考えていない人は意外と多く、これが実際の避難を難しくします。

モノを揃えるだけで安心するのではなく、行動を決めておくことが、本当の意味での備えにつながります。


結局、私たちは何をしておけばいいのか(現実的な結論)

南海トラフ地震は、恐れたところで発生を止められるものではありませんが、まったく考えずに日常を過ごすよりも、少し意識を向けておくだけで被害を減らすことは可能です。
ハザードマップを一度確認し、家族と集合場所を話し合い、スマートフォンが使えなくなる前提で行動を想像してみるだけでも、それは十分に意味のある備えと言えるでしょう。

「いつ来るのか」という不安に振り回されるよりも、「来たあと、どう動けるか」を考えることこそが、南海トラフ地震と現実的に向き合うための第一歩なのです。


昔から「30年以内に大地震が来る」と言われ続けてきましたが、冷静に考えてみると、その言葉を聞き始めてから、すでに30年近く、あるいはそれ以上の時間が経っていると感じる人も多いのではないでしょうか。

だからといって「もう来なかったから大丈夫」「この先30年は起きない」と言い切れる根拠はどこにもなく、むしろ予測が外れ続けているからこそ、いつ起きてもおかしくないという不安が残ります。

地震予測はあくまで予測であり、未来を確定させるものではありません。
私たちにできるのは、時期を当てようとすることではなく、いつ来ても慌てないように日常の中で少しずつ準備を重ねておくことだけなのです。