お笑いトリオ「我が家」の杉山裕之さんが、2026年10月14日、食料品を万引きした疑いで書類送検されました。供述では「収入が少なく不安になり、所持金を残そうと思った」と説明しているとされています。
では、なぜかつて月収600万円ともいわれた芸人が、1189円の商品を万引きするまで追い込まれたのでしょうか。
今回の問題は、万引きそのものだけを見ていては分かりません。「我が家」がテレビから徐々に姿を消していった過程と、杉山さん自身の仕事・人間関係・体調の変化を重ねると、別の構造が見えてきます。
杉山裕之さんの万引き事件で何があったのか
今回の事件が発覚したのは、2026年9月15日です。
東京都目黒区のスーパーで、杉山さんがウインナーや冷凍食品など7点、販売価格にして計1189円の商品をセルフレジで精算せず、袋に入れた疑いが持たれています。
店員が不審な動きを確認して声をかけ、その後、警察に通報したと報じられています。杉山さんは容疑を認め、「収入が少なくなって不安な気持ちがよぎり、少しでも所持金を残したかった」という趣旨の説明をしています。
所属事務所のワタナベエンターテインメントは10月14日、本人が報道された事実関係を認めていると発表し、当面の間、謹慎処分とすることを明らかにしました。
ここで一つ注意したいのが「書類送検」という言葉です。
書類送検とは、それだけで有罪が確定したという意味ではありません。警察から事件が検察へ送られ、その後、検察官が捜査を踏まえて起訴するか不起訴にするかを判断する段階です。
つまり現時点では、「万引き事件で書類送検された」という事実と、その後の刑事処分は分けて考える必要があります。
では、なぜ今回の事件で「収入が少なくなった」という言葉が大きく注目されているのでしょうか。
我が家はかつて「月収600万円」の人気トリオだった
今の「我が家」からは想像しにくいかもしれませんが、2000年代後半の我が家は、テレビで頻繁に見かける人気トリオでした。
「爆笑レッドカーペット」や「エンタの神様」などのネタ番組に出演し、ボケとツッコミを入れ替えていく「ローテーション漫才」でも知られる存在になります。
2023年に出演した「しくじり先生」では、全盛期について杉山さんと坪倉由幸さんの最高月収が600万円、谷田部俊さんが300万円だったと明かされています。ところが、その時点ではトリオとしての仕事がほとんどなく、杉山さんと谷田部さんの収入は月2万円ほどまで減少していたとされています。
ここには、芸能人の収入が一般的な会社員とは大きく違うという事情があります。
会社員なら、会社から毎月一定の給与が支払われるのが基本です。一方、芸人はテレビ出演、ライブ、営業、CM、イベントなど、仕事ごとの収入を積み重ねる形になります。
つまり、「売れているときの収入」と「仕事が減った後の収入」の落差が非常に大きくなりやすい仕事です。
月600万円だった人が、同じ生活水準を維持したまま月2万円になれば、単純計算で収入は約99.7%減ります。
もちろん、これは2023年時点で語られた数字であり、2026年9月の杉山さんの実際の収入を示すものではありません。
それでも、今回の「収入が少なくなって不安だった」という供述を理解する材料にはなります。
なぜ我が家はテレビから消えていったのか
我が家の露出が減った理由について、単純に「人気がなくなった」と考えるだけでは不十分です。
報道や過去の本人たちの発言をたどると、いくつかの要因が重なっていたことが分かります。
素行や酒癖をめぐる問題
まず大きかったのが、杉山さん自身の素行や酒癖をめぐる問題です。
2019年に放送された「ロンドンハーツ」では、坪倉さんが杉山さんの酒癖について問題視し、トリオの解散も視野に入れて話し合う場面がありました。
報道によると、飲み会で後輩を説教して泣かせたり、坪倉さんとの酒席でトラブルになったりした過去が語られています。坪倉さんは「酒をやめるか、『我が家』をやめるか」と迫りましたが、杉山さんは禁酒ではなく「外では3杯まで」という対応を示しました。
さらに2019年には、その問題を題材にした我が家の公式YouTube企画まで始まっています。
これは単なる悪口企画ではなく、杉山さんの更生とトリオ再生を目指す意味合いを持った企画でした。
つまり、少なくとも2019年には、杉山さんの行動が「芸人仲間の笑い話」だけでは処理できない段階まで来ていたことが分かります。
九州への活動拠点移動
もう一つの転機が、2012年から始まった九州での活動です。
杉山さんは2012年、単身で九州へ活動拠点を移しました。当時は「我が家として成長するためにMC力を鍛える」という目的が説明されており、当初は福岡で複数のレギュラー番組を持つなど、決して最初から失敗していたわけではありません。
しかし、その後は九州でのレギュラーが長続きせず、東京へ戻ることになります。
この時期を「左遷」と表現する報道もありますが、公式に発表された目的はあくまで活動拠点を九州へ移し、MC力を鍛えることでした。
重要なのは、人気絶頂期に活動の軸を変えるほど、我が家の内部では将来への危機感が生まれていたという点です。
トリオとしての仕事そのものが減少
そして、もっと大きな問題となったのが、3人で活動する機会そのものの減少です。
2023年の「しくじり先生」では、3人が会話するとすぐケンカになるほど関係が悪化し、トリオの仕事がほとんどなくなった状況が語られています。坪倉さんは解散を決意したこともあったとされています。
さらに坪倉さんは俳優としての活動が増え、ドラマや映画への出演が目立つようになりました。
つまり「我が家」という一つの仕事の単位が弱くなる一方で、坪倉さんには別の収入源と活動の軸が育っていったわけです。
これはトリオ芸人ならではの難しさともいえます。
3人のうち1人だけ別ジャンルで成功すれば、その人にとってはプラスですが、トリオ全体として見ると活動のバランスが崩れます。
「収入減→万引き」と単純化してはいけない理由
今回もっとも注意したいのは、「収入が減ったから万引きした」とだけ結論づけないことです。
杉山さん自身が収入減への不安を理由として説明しているため、そこは重要な要素でしょう。
しかし、収入が少なくなった人が全員、万引きをするわけではありません。
ここには「芸人だから」「貧しかったから」という一言では説明できない個人の判断や環境があります。
さらに、今回の事件直前には体調面の問題もありました。
杉山さんは2026年7月、急に体に力が入らず立ち上がれない状態になり、検査の結果「低カリウム性ミオパチー」と診断されたことを公表しています。
その後8月5日に退院を報告しましたが、入院を伴うほどの体調不良があったことは事実です。
したがって、今回の経緯を考える場合には、
仕事の減少、収入への不安、長年の人間関係の問題、そして直近の体調不良など、複数の要素を切り分けて考える必要があります。
もちろん、それらが今回の万引きの直接的な原因だったと断定することもできません。
芸人の「収入の不安定さ」だけでは説明できないもの
ここからが今回の問題を考えるうえで、もっとも重要な部分です。
芸人という仕事は、人気が出れば大きな収入を得られる一方、仕事が減れば収入も急激に落ちます。
しかし、本当に怖いのは収入そのものより、「仕事が減ったときに、次の仕事につながる信用を維持できるか」という問題です。
芸能界では、テレビ出演の枠を一度失ったからといって、会社員のように別部署へ異動することはできません。
番組に呼ばれるか、営業に呼ばれるか、共演者から声がかかるか。
こうした一つ一つの仕事には、本人の知名度だけでなく、現場で一緒に仕事をしたいと思われるかどうかも関係します。
その意味では、過去の素行や人間関係の問題が報道されてきたことは、単なる「芸能人の評判」の問題ではありません。
人気商売では、信用そのものが仕事を生む資産になるからです。
一方で、「素行が悪かったから仕事がなくなった」と単純に断定するのも危険です。
テレビの流行や番組改編、芸能界の世代交代、本人の年齢、出演ジャンルの変化など、仕事量を左右する要素は数多くあります。
実際、我が家の場合も杉山さんだけではなく、トリオ全体の活動が減少していました。
だからこそ、「杉山さんの素行だけが原因」と考えるより、人気のピークを過ぎた後にトリオとして再構築できなかったこと、その過程で個々の活動にも差がついたことを見る必要があります。
今後「我が家」はどうなる?再起の可能性はあるのか
今回の書類送検によって、我が家の活動にはさらに大きな影響が出る可能性があります。
所属事務所は杉山さんを当面謹慎としています。今後については捜査の進展に応じて適切な処分を行うとしています。
ただし、現時点で「我が家が解散する」と決まったわけではありません。
そもそもトリオとしての活動が減っていた一方、坪倉さんと谷田部さんがそれぞれ活動を続けているため、今回の事件がそのまま解散に直結すると考えるのは早計です。
一方で、再起するためには、単に謹慎期間を終えるだけでは十分ではないでしょう。
今回の事件について説明し、反省を示すことはもちろん、これまで指摘されてきた人間関係や酒癖などの問題についても、周囲から「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらえる状態を作れるかが重要になります。
芸能界では、一度失った仕事を取り戻すこと以上に、「もう一度この人と仕事をして大丈夫だ」と思ってもらうことのほうが難しいからです。
そして、これは芸人に限った話ではありません。
会社員でもフリーランスでも、収入は「能力」だけで決まるわけではありません。
仕事を任せてもらえる信用、周囲との関係、体調、環境、そして仕事が減ったときに別の道へ切り替えられる準備。
こうしたものが重なって、生活の安定が作られています。
まとめ|杉山裕之さんの問題は「1189円」だけでは見えてこない
今回、杉山裕之さんはスーパーで1189円の商品を万引きした疑いで書類送検されました。
本人は「収入が少なくなって不安だった」という趣旨の説明をしており、所属事務所は当面の謹慎処分を発表しています。
ただ、この事件を「お金がなかったから万引きした」という一言で終わらせると、背景にあるものを見失います。
我が家はかつて最高月収600万円ともいわれる人気トリオでした。しかし、その後はトリオの仕事が減り、メンバー間の不和や杉山さんの素行・酒癖をめぐる問題、九州での活動、YouTubeによる再起の試み、坪倉さんの俳優業へのシフトなど、さまざまな変化が重なっています。
そこへ2026年には体調不良も重なりました。
もちろん、これらが一直線につながって今回の事件を生んだ、と断定することはできません。
それでも一連の経緯を見ると、今回の事件は突然現れた出来事ではなく、長い時間をかけて仕事や人間関係、生活環境が変化していった先で起きた出来事として見ることができます。
そして、ここに芸能人という人気商売の厳しさがあります。
売れているときは月600万円でも、仕事がなくなれば収入は大きく落ちる。
そのとき支えになるのは、過去の人気だけではありません。
新しい仕事を得る力、周囲との信頼関係、別の収入源、そして環境が変わったときに自分自身を立て直す力です。
今回の事件をどう受け止めるかは人それぞれでしょう。
ただ、1189円という金額だけを見るのではなく、「なぜ、ここまで仕事と生活の状況が変わってしまったのか」までたどることで、ニュースの見え方は少し変わってくるのではないでしょうか。

