「家のことを手伝うのは当たり前」。
そう言われて育った人ほど、この問題を見落としがちかもしれません。
けれど近年、「ヤングケアラー」という言葉がニュースや学校現場で急に増えてきました。
理由はシンプルで、見過ごせない規模まで“静かに広がっている”からです。
ヤングケアラーとは何か?まずは言葉の整理から
ヤングケアラーとは、本来は大人が担うべき家族の介護や世話、精神的ケアを日常的に行っている子ども・若者のことを指します。
対象年齢はおおむね18歳未満、広くは20代前半まで含まれることもあります。
介護というと高齢者を思い浮かべがちですが、実際はそれだけではありません。
・障害のあるきょうだいの世話
・精神疾患を抱える親のケア
・家事全般の担い手
・家族の感情を支える“聞き役”
ここまで来ると、もはや「お手伝い」という言葉では足りません。
ちなみに本人たちは、自分をヤングケアラーだと思っていないケースが大半です。
数字で見るヤングケアラー|日本では何人いるのか
内閣府や文部科学省の調査によると、
中学生の約5%、高校生の約4%が「家族の世話をしている」と回答しています。
これを人数にすると、全国で数十万人規模。
1クラスに1〜2人はいる計算です。
しかもこれは「自覚して答えた人」だけの数字。
「うちは普通」「みんなやっていること」と思っている子は、そもそも調査で拾われません。
統計の世界では、こういう数字を“氷山の一角”と呼びます。
見えている部分より、見えていない部分の方が圧倒的に大きいという意味です。
なぜ“見えない存在”になりやすいのか
ヤングケアラーが表に出にくい理由は、いくつも重なっています。
まず家庭内の話であること。
次に、本人が「言ってはいけない」と感じていること。
そして大人側が「踏み込みにくい」と感じていること。
学校でも、
「遅刻が多い」「宿題を忘れる」「授業中に寝ている」
という“結果”だけが見えて、原因までは共有されにくいのが現実です。
少し皮肉な話ですが、
一番しっかりして見える子ほど、実は一番抱え込んでいることも少なくありません。
勉強・進学・就職への影響は想像以上
ヤングケアラーの影響は、生活だけにとどまりません。
・勉強時間が確保できない
・部活や友人関係を諦める
・進学をためらう
・就職先を「家から近い」で選ぶ
こうした選択が積み重なり、
将来の選択肢が、本人の努力とは無関係に狭まっていくケースがあります。
本人は「自分が選んだ」と思っていますが、
実際は「選ばされた選択」であることも多いのです。
海外と比べる日本の支援体制|実は遅れている?
たとえばイギリスでは、
ヤングケアラーは法的に定義された支援対象であり、学校や自治体が把握・支援する仕組みがあります。
一方、日本はどうかというと、
支援制度は増えつつあるものの、自治体ごとの温度差が大きいのが現状です。
「窓口はあるけど、知られていない」
「相談しても、たらい回しになる」
こうした声も少なくありません。
制度より先に、認知が追いついていないとも言えます。
本人がSOSを出せない構造的な理由
ヤングケアラーが声を上げにくい理由は、気持ちの問題だけではありません。
・家族を悪く言うことへの罪悪感
・「自分が我慢すれば回る」という思考
・相談しても変わらないという諦め
特に多いのが、
「迷惑をかけたくない」という感情です。
大人から見ると健気ですが、
社会全体で見ると、それは明らかな負担の押し付けでもあります。
私たちが“気づく側”になるためにできること
大げさな支援をしなくてもいいのです。
・少し様子が違うと気づく
・理由を決めつけない
・話す余地を残す
「最近どう?」
この一言が、救いになることもあります。子どもの貧困
ヤングケアラー問題は、
特別な家庭の話ではありません。
高齢化、病気、ひとり親、共働き。
条件が揃えば、明日、誰の家庭にも起こりうる現実です。
「家族だから仕方ない」で終わらせない。
それだけで、社会は少し前に進めるのかもしれません。


